「慟哭の冠」久保田かずのぶの本 あらすじ・感想レビュー

慟哭の冠(久保田かずのぶの本)あらすじ・感想 芸人の本

「慟哭の冠」(どうこくのかんむり)はとろサーモン久保田さんによるエッセイ本です。

慟哭の冠のあらすじ

とろサーモン久保田さんが大阪から東京へ進出するも、

仕事は増えず、M-1でも敗退が続き、東京の家賃の重荷も背負って芸人を続けます。

生活資金のため、奥さんはコンビニ店員からガールズバーへジョブチェンジし、

久保田さんも余裕がなく、日常生活は夫婦喧嘩やすれ違いの日々、、

挙句の果てに離婚届を置いて出ていかれてしまいます。

その後も、苦労の中、芸人としてネタ作りやM-1に挑み、

とろサーモンはM-1に出場する最後の年で優勝し、

苦労が報われ、たくさんの仕事が舞い込み、状況は一変します。

東京進出~M-1優勝後数年までの思いを綴ったエッセイ本です。

(本の割合としてはM-1優勝するまでのエピソードが8割以上です。)

慟哭の冠の感想・レビュー

自分はとろサーモン久保田さんのことを、テレビで見かけるいちタレントぐらいの認識でした。

とろサーモンさんはYouTubeをされているので、1,2個みたことがある程度で、

久保田さんは兄貴っぽい、はっきりした物言いな感じの芸風だなと思っていました。

そんな中、「慟哭の冠」が発売されたので、元々芸人さんのエッセイが好きだったのと、

どんな人なのか知りたいという理由で惹かれて購入ページを開きました。

すると概要に、嫁に出ていかれた旨が書いてあったので、「えー!?そんなことが!?」と思い、

これは苦労がありそうだ…と思い購入し読むことにしました。

読了後の感想としては、「面白かったし読みやすかったー!」というのはもちろん、

元々の第一印象の兄貴っぽい、とかはっきりした物言い(威圧感がある)の理由も

エッセイ上で語られた経験や行動を通して伝わってきました。

そりゃこんな経験してたら普段ああいう言動するよね、と腑に落ちました。

芸人さんのエッセイを読むと人柄が伝わってきて、メディア上での見え方も変わってさらに楽しめるんです。(n回目)

※この先ネタバレ、私情、個人的な感想を含みますのでご注意ください

この先は、本を読む中で特に心に残ったこと、驚いたこと、面白かったことと絡めて感想をレビューさせていただきます。

「キャプテン★ザコ」

久保田さんが東京に進出した際、家の近くに住んでいる芸人の名前、

それが「キャプテン★ザコ」なのですが、

この方との絡みが売れない芸人の日々の暮らしを強調させるかのように存在していて、

日々のLINEのやりとりや、コンビニバイトの廃棄惣菜を渡したり、一緒に時間をつぶしたり…

とてもリアルに売れない芸人の生活が想像できるエピソードが綴られていました。

客は13人だった。

東京進出後のあるライブでの観客数が13人だった、という内容なのですが、

今では人気者のとろサーモンさんでも東京でこんな時代があったんだ、と驚きました。

ライブに足を運んでもらうためにチケットを手売りで何時間もかけて売って、

ライブが始まると、売ったチケット数の2割も来てもらえない、

同情でチケットを買ってくれただけで、

お笑いを楽しみにしてくれているわけじゃなかったのかと疑いたくなる、

悲しさと虚しさが襲ってきそうです。。

飲食店の夜勤でも働いたが、腹が減りすぎて客の残した飯を

朝方のゴミを漁るカラスみたいに隠れて食べて3日でクビになった。

ここまでするのは本当に追い込まれているとしか思えないエピソードです。

食費を浮かすためなのか、食費がなく常におなかが減っていたのかは不明ですが、

こんなことまでしないと生活できないって、頭がおかしくなってもしょうがないです。

こういった生活も危ぶまれるエピソードがいくつもあり、本当に苦労されたんだなとひしひしと感じました。

金持ちの社長

登場人物のみの抜粋ですが、「金持ちの社長」が複数回出てきます。

エピソードに出てくる金持ちの社長は「金にまみれた汚い大人」の権化とも言える存在で、

金持ちの社長はお金を出すからと、売れない時代の貧乏な久保田さんに、

アルバイトの中で、面白くもないのに愛想を強要したり、泥酔した人のゲロの世話等をさせたりします。

別のエピソードでは、この金持ちの社長は札束をキャバクラで空中へばらまき、周りの人はこぞって床から拾うという話もありました。

これまでの話の中で久保田さんはお金に困っているというのはいろんなエピソードがあり、

大阪からいろんなものを手放して夢を追い東京に出てきて、奥さんにも負担を強いているという状況で、

汚いお金に手を伸ばすか、倫理観とプライドと、追い詰められている感じが読んでいて胸が痛かったです。

ここまでの極限状態での選択や苦労は、人として腐ってもおかしくない、そういう経験だと思いました。

ただ、久保田さんの芸風が鋭利で毒があるのは、こういった経験から得たものも大きいのだろうなと思います。

してあげた事より、してもらった事を忘れずに生きるべきだと学んだ。

この文章は、奥さんが出ていった時のエピソードの中の一文です。

自分はこのエピソードでは、久保田さんの痛みが並々ならぬものとは思うのですが、

やはり当事者しか胸の痛みはわからないし理解ができないものと思います。

そういった経験を、読者が理解とは程遠くても、文章を通して伝えてくれるのがエッセイの醍醐味だと思います。

そして、後に久保田さんはM-1で優勝し、仕事もたくさん入ることとなるのですが、

今回学んだことが伏線であるかのように、売れた後、恩がある人に恩返しをするエピソードがあります。

元々恩義に報いるタイプなのか、この件から変わったのかはわからないですが、

恩を返す姿勢はとても素晴らしい・かっこいいなと思いました。

糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞糞。

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これは2015年のM-1でのエピソード中の一文としてあった文章です。

久保田さんの人柄が出ている表現で思わずニヤッとしてしまいました。

エピソードとしては、笑うところではない、芸人として重要なM-1のエピソードだったのですが、

感情が文章から漏れているというか・・・。

作中の文章の引用はここまでにして、

最後に感想を述べさせていただきます。

レビューの通り、とても面白く、興味深く読ませていただきました。

久保田さんの意志を貫くシーンが作中に何回もあり、

屈しそうになりながらも、何者にも屈することなく生きている感じがすごくかっこよかったです。

大筋で人に流されるような人ではないと感じました。

また、苦労することで人としての厚みが出るというのは本を通して、久保田さんという人間を通して伝わってきました。

楽しいことも苦しいこともひっくるめて自分として生きられる気がします。

M-1という夢を最後の最後につかみ取った物語でもあるので、夢を追いかけている人や苦労を抱えている人にも勇気を与えてくれる本だと思います。

読了後は、久保田さんがただの兄貴じゃなく、久保田さんという人間として、いろんなメディアで見れることがとても楽しみです。